Special 企業の未来を守るインテリジェンス戦略 ~稲村悠氏が語る経済安全保障と技術流出対策~【013 稲村悠さん】深堀りインタビュー!講師紹介リレー

講師紹介

稲村悠(いなむらゆう)さん
Fortis Intelligence Advisory株式会社 代表取締役/(一社)日本カウンターインテリジェンス協会 代表理事/外交安全保障アカデミー「OASIS」講師
1984年、東京都生まれ。大学卒業後、警視庁に入庁し、刑事課を経て公安部捜査官として諜報事件の捜査や情報収集に従事。警視庁退職後は不正調査業界に携わり、大手コンサルティングファーム(Big4)で経済安全保障や地政学リスク対応の支援を行う。その後、Fortis Intelligence Advisory株式会社を設立し、BCG出身者とともに、世界最大級のセキュリティ企業と連携しながら、企業のインテリジェンス機能構築や経済安全保障対応、技術情報管理などのアドバイザリーを提供している。
また、一般社団法人 日本カウンターインテリジェンス協会を通じて、スパイやHUMINT(ヒューマン・インテリジェンス)の手法研究を行い、防衛省をはじめとする官公庁、自治体、企業向けに諜報活動やサイバー攻撃に関する警鐘活動を展開。メディア出演や講演実績も多数。
著書に『企業インテリジェンス』(講談社)、『防諜論』(育鵬社)、『元公安捜査官が教える「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術』(WAVE出版)などがある。
インタビュー
質問1
稲村悠さんは大卒後に警視庁に入庁され、地域課、刑事課勤務を経て公安部捜査官としてご活躍されました。警視庁でのご経験を経て、現在のキャリアに繋がる転機はどのようなものだったのでしょうか?
警視庁では、先輩、同僚の皆様の多大な指導と支援を頂きながら濃い経験をさせて頂きました。警視庁入庁時点で、刑事、公安をやってみたいと頭に描いていたのでそれらも周囲のご指導のおかげで実現できて良かったと思います。諜報事件の捜査に従事できたのも極めて貴重な経験でした。
一方で、自身の人生を考えた時に民間の世界に出たいという強い想いを抱くようになり、キャリアチェンジをしました。後に、「経済安全保障」という流れが押し寄せ、私自身Big4と呼ばれるコンサルファームで企業に対して経済安全保障対応支援を行いました。
その中で、技術流出対策という観点で警視庁での経験が大きく貢献しました。 一方で、民間で品質不正や情報漏洩事案調査など不正調査の経験も積んでいたこともあり。民間での経験が現在の私の根幹となっているのも事実です。
質問2
現在はFortis Intelligence Advisory株式会社の代表取締役や、(一社)日本カウンターインテリジェンス協会の代表理事としても活動をされておりますが、特に力を入れていらっしゃる分野はどういったことでしょうか。また、企業におけるインテリジェンス機能の構築支援を行う中で、最も重要だと感じているポイントは何ですか?
現在は、同社と協会活動を通じて、技術流出対策のコンサルティング/アドバイザリーに重点を置いています。技術流出の危険性は叫ばれて久しいですが、じゃあ何をすればよいの?が明確に示されず、企業ではその対応策に苦慮しています。一重に技術流出と言っても、違法な行為から合法的な通常取引、サイバー攻撃など多岐に渡ります。更には、自社社員による技術持ち出しといった内的脅威に加え、国家アクターといった外的脅威も混在しています。これらを踏まえ、まず何を守るべきかの整理から始まり、想定される脅威への対策を粒度を上げてアドバイスしています。
上記の例は技術流出対策ですが、企業を取り巻く環境は流動的であり、アメリカの関税政策など、国際情勢つまり地政学リスクが大きく関与してきます。こういった意味でも、企業において良質な情報をいち早くキャッチし、自社にどう関与するのかといった示唆を生み出すインテリジェンス機能が要求されます。
このインテリジェンス機能において、最も重要なのはインテリジェンスを生成する仕組みである「インテリジェンス・サイクル」という活動プロセスに準拠することだと考えます。
これについては、新著『企業インテリジェンス 組織を導く戦略的思考法 (講談社+α新書)』において、詳しく説明しています。(質問5で詳しく説明します)
質問3
セミナーや講演会などにも多数登壇をされておられますが、最近ではどういったテーマでのご希望が多いでしょうか。
昨年は、80回近い登壇機会を頂戴しました。
ご要望としては、「経済安全保障に関する技術流出対策」や「企業がとるべきサイバー攻撃への対応」が多くなってきています。
先日は、とある電力事業者様向けに「内的脅威・外的脅威リスクへの対応」といった非常に専門的な内容でお話させて頂きました。 先ほどご説明したインテリジェンス・サイクルについては、専門的かつ企業実務にそった内容でご講演できますので、今後「企業インテリジェンス」といテーマでお話していきたいと思います。

質問4
新書【企業インテリジェンス 組織を導く戦略的思考法 (講談社+α新書)】 を出版されましたが、内容を少しご紹介いただけますでしょうか。
新著では、企業に要求されるインテリジェンスを軸に、インテリジェンス・サイクルという活動プロセスの重要性を解説しています。
インテリジェンス・サイクルとは、経営者のような意思決定者が「XXXXについてどうすべきか」などと、インテリジェンスの生成を担当者に命じ、担当者は情報を収集し、分析、意思決定者の要望に応えつつ、意思決定に資する良質な示唆=インテリジェンスとして生成することを指します。
このプロセスは、企業が戦略を描いたり、リスクマネジメントを行う上で、非常に有用なプロセスとなります。現代では、個人主義化が進み、組織における意思決定プロセスが複雑かつフワフワとしたものになりがちであり、それらを是正するある意味「意思決定プロセス」を示すものとなります。新著では、企業の経済安全保障室や大学教授、コンサルティング企業などに取材し、生の声を聞きながら、企業の課題を集めつつ、インテリジェンス・サイクルを企業活動でどう活用していくのか、明確に示しています。企業が新たな技術やサービスを世の中に広めたい場合や、戦略的な目標を実現するために積極的に情報を収集・分析しながら、多様なステークホルダーとのコミュニケーションを通じて合意形成を図る「攻め」の動きでも、インテリジェンスの思考法が大いに役立つことを書いています。

質問5
ご自身の活動を通じて、今後の目標や、社会や企業にどのような変革をもたらしたいとお考えか、教えてください。
現在は、技術流出対策を中心に行っていますが、中小企業や町工場、スタートアップはそこにリソースが避けないというジレンマも抱えています。ですので、彼らを支援し、技術流出対策のコミュニティを作り、地道に拡大させていきたいと考えています。それがゆくゆくは、社会に貢献するものだと考えています。
そして、インテリジェンスを活用し、企業や組織が自律することを支援し、強い組織作りを丁寧に支援していきたいと考えています。
質問6
最後に、これから講演会やセミナーなどをご企画される皆さまにメッセージをお願いします。
私のこれまでの回答で、非常に固い・難しい人間のようなイメージを与えてしまいそうですが、実際の講演会やセミナーでは笑いを常に取りに行くスタイルでお話をしています。
楽しく、しかし必ず学びがあるお話を心掛けています。
既にあるテーマに限らず、主催者様のご要望に沿った内容にカスタマイズしていますので、お気軽にご相談ください。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

稲村さん、ありがとうございました!
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